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供するようになりました。  今担当しているのはアンジェルマン症候群という遺伝子疾患をもつ、小学五年生になる子どもです。こ の病気は 15 番目の染色体に機能喪失が起こり、症状はとても重篤です。精神発達の遅れや運動機能障害が みられるため、言葉を話すことができません。普段難しい内容は、文字盤を使ってお母さんと話していま す。お父さんもある程度この子のいうことがわかるようですが、私たちは何を話しているのかは全くわか りません。  トレーニングを続けていたある日、学校で事件が起こりました。授業の準備をしているとき、その子が 間違ってほかの教科書を出してしまったのだそうです。先生がそれを見て、教科書を取り上げて立ち去ろ うとした瞬間「持って行かないで!」という言葉を発したそうです。相手に伝わる言葉をしゃべったものだ から、学校の先生もびっくりしてお母さんに報告が来たといいます。  もちろん、ダウン症候群やアンジェルマン症候群が治るということではありません。しかしダウン症候 群のように遺伝子に疾患があると、脳にプログラムされている人間本来の機能が発揮されにくく、より障 害の方に引きずられる傾向があるのではないかと思っています。聴覚システムはそれを正常に寄せる力が あるのではないでしょうか。遺伝子や脳に障害がある子すべてに効果があるわけではないのですが、かな りの確率で目に見えて改善を示すケースが多いのは事実です。 21