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人間は不安を感じる 遺伝子を持っている 私たちはどうして不安を感じるのでしょうか? 一言 でいえば、それは「本能」だからです。 先々に多少の不安を感じながら毎日を過ごしている 私たちは、不安を感じたとき、その不安を打ち消そ う、現実にならないようしようと対策をします。 それは、未来を想起すると、自然に不安を感じる 遺伝子を持っている種族だけが、後世に遺伝子を残 し得たからです。 我々の先祖は太古の昔、農耕や狩猟で生命を維 持していました。獲物や作物がとれなかったらどうしよ うと、将来に不安を感じる先祖たちが、いろいろと工 夫をし、勤勉に対応し、その恩恵を子孫に伝承してき たからこそ、我々はこうしてこの世に存在しえているの です。 もし先祖たちが何事においても「なんとかなるさ!」と 楽観的に考え、何も努力や工夫を重ねなかったら、 獲物は取り逃がし、農作物の収穫は得られず貧窮 し、人間は死滅してもおかしくはありません。 このように、人間は未来や将来のことを考えると、 不安を感じる遺伝子をもともと持ち合わせているわけ です。 人生も「だろう運転」より 「かもしれない運転」を 自動車教習所で、「だろう運転」より、「かもしれな い運転」を、と指導を受けたと思います。「減速しなく て大丈夫だろう」ではなく「減速しないとカーブを曲が り切れないかもしれない」と考えましょうというものです。 「だろう運転」は、一旦は楽観的に考えるものの、 実際には実行に移しません。楽観的に考えるものの、 悲観的に実行しないから失敗に通じやすくなります。 他方「かもしれない運転」は、一旦は悲観的に考 えますが、その後、気持ちを入れ替え、不安を克服 しようと楽観的に実行に移します。この気持ちの入れ 替えにより、失敗を回避できる可能性が生じるのです。 確かにその不安や悲観的な考えが続くと、それはう つ病といわれる「抑うつ性障がい」や、パニックといわ れる「不安障がい」という病気です。そういった方々 も、「認知行動療法」という気持ちや考えを切り替 え、簡単なことから準備や行動を変えてもらうことで治 癒に導くことが可能です。良い行動は続けてもらう、 良いことを中断していたら、再開してもらうのです。た とえば、朝ご飯を食べていなければ、食べ始めてもら う。運動していないなら、散歩を開始してもらいます。 そこまで症状が重くない方も、まだ大丈夫「だろう 運転」は禁物です。過度な残業を続けていては、過 労死や過労自殺に至ってしまう「かもしれない」運転を 心がけましょう。ウサギのように勝ち急ぐより、亀のよう に負けずに生き残る戦術の方が勝ち残れるという例え とも通じます。 櫻澤博文氏(さくらざわ ひろふみ) 医師、労働衛生コンサルタント メンタルヘルスのコツは、 「だろう」ではなく「かもしれない」と考える いつもこころにうるおいを! 産業医Dr.櫻澤のヘルシーコラム 13