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「健康」から「健幸」へ。 身体の健康だけではなく 心が幸福であることが重要 私がインドの伝統医学、アーユルヴェーダと出 会ったのは、北里研究所付属東洋医学総合研究 所で3年ほど漢方や鍼灸などの研究した後に六本 木で開業していたときでした。その後、脈診のこと を深く学ぶために1 年間オーストラリアに留学し、帰 国後は現代医学的な見地から伝統医学を研究し、 1999年に富山県国際伝統医学センターに赴任しま した。そこでは、アーユルヴェーダをはじめ、イスラ ム、中国、ペルシャなどの伝統医学の調査と未病 の研究を行いました。 アーユルヴェーダの定義は、「幸福で有益な長 寿をもたらす知恵」。広い意味での生命の科学で す。肉体だけではなく、心、魂が至福に満ちてい るという「幸福感」を非常に大事にします。幸福で なければ、長く生きてもつまらないのではないでしょ うか。また幸福な人ほど長生きすることが実証され ています。つまり「健康」よりも「健幸」であること が重要なのです。 では、魂が至福に満ちている状態にするにはどう したらよいのでしょうか。伝統医学はそこをきちんと 体系化しています。幸福になるには、心、五感、 魂が重要です。禅宗の教えでも善悪を考えず、絶 対善があるのみです。危険なのは、個人主義と称 し、アイデンティティばかりを主張することです。スト レスを感じ、孤独感、欲求不満が強まり、やがて は心も荒れて、身体も荒れてしまうでしょう。 こうした考えは、今から2700 年前のアーユル ヴェーダの古典『スシュルタ・サンヒター』の中にす でに書いてあります。だからこそ人類は「温故知 新」の考え方を捨ててはいけないのです。温故知 新は「Go back to the future」であり、古いものを 見れば見るほど新しい考え方ができます。 2 元ではなく、3 元で考える 古代インドヴェーダの時代には、「3 in 1 structure」、つまり3つで1つという考え方でした。 しかし、現代では、自分と他人、敵と味方、病 気と健康、生と死といったように、2つのうちどちら かという考え方をしてしまいがちです。すると分離 ............ .................... ........ 14